2025特級セミファイナル新曲は根岸宏輔さんに委嘱しました

8月19日に迫ったセミファイナルを前に、7月29日、三次予選結果発表の夜、今年の委嘱新曲課題の楽譜が2025年度セミファイナリスト6名に手渡されました。毎年のお楽しみ、セミファイナリストが共通のキャンバスにそれぞれの色を付けていく恒例のセミファイナル新曲課題曲、今年は、2021年度武満徹作曲賞第1位受賞など活躍中の気鋭の作曲家、根岸宏輔さんに委嘱させていただきました。

★新曲課題 タイトル
「第三法則の庭」(2025)

作曲家・根岸宏輔さんより メッセージ

人間はこれまで様々な分野において、「法則」を立てて世界を説明し、理解しようとしてきました。なかでも私が強く惹かれているのは、「第三法則」と呼ばれる段階です。第三法則に至ることで、物事の動きや方向が明らかになり、ひとつのまとまりが生まれるように思えます。
そして不思議なことに、各分野の第三法則を眺めるたび、私の中には「境界」という言葉がぼんやりと浮かんできます。何かとの境い目に接近すること、あるいは、何かと何かの関係や作用によって生まれる「動き」や「調和」など、そうした現象には、どこか神秘的なものすら感じられるのです。

この漠然としたイメージを音楽にできないか、そう考えたところから本作の創作がはじまりました。二つの要素が接近し(あるいは交じり合い)、ときに相反し、静止と運動を繰り返す。エネルギーや響きの変化が空間や関係を形作る。それを「法則が及ぶフィールド」として表現したいと思いました。
その音のフィールドは、演奏者が自在に歩き回れる「庭」のようなものであり、法則を操り音と遊ぶ「砂場」のようなものかもしれません。そうした思いを込めて、タイトルを「第三法則の庭」としました。

根岸宏輔

ねぎし・こうすけ●1998年生まれ。2020年に、室内楽作品《仄めく幻影の その揺曳する挙動》が第37回現音作曲新人賞(併せて聴衆賞)、合唱作品《遠望》が第31回朝日作曲賞(合唱組曲)を受賞、翌年には卒業制作として完成させたオーケストラ作品《雲隠れにし 夜半の月影》が2021年度武満徹作曲賞第1位(審査員:パスカル・デュサパン)を受賞した。同作品が第32回芥川也寸志サントリー作曲賞(旧芥川作曲賞)にノミネートされた。作品は、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、アンサンブル・ノマド等によって演奏されている。

日本大学芸術学部音楽学科作曲・理論コース(作曲)を卒業。卒業時には、卒業制作として完成させた作品に対し芸術学部長賞を、学業成績に対し優等賞を受賞。その後同大学院修士課程を修了。大学院修了時には、修了制作として完成させた作品及び副論文に対し湯川制賞を受賞。これまでに作曲を伊藤弘之氏に師事。

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